高齢になると換気量が半分ほどになる

高齢になると、肺の換気量は、20歳代にくらべて60歳では40~60%にまで下がるといわれます(最大換気量の低下)。
原因としては、呼吸に関する筋肉・神経の低下、免疫の低下などがあります。気道のまわりも筋肉でかこまれているため、とくに息を吸うときに苦しさを感じやすくなります。
また、肺の弾力がなくなり、息を吐ききれなくなります。さらには横隔膜のうごきが弱まることでも、息苦しさを感じやすくなるのです。
骨格が変わることによる呼吸の変化について

本来であれば呼吸にあわせて胸(胸郭・きょうかく)が動きますが、加齢により、変形、骨粗鬆症をおこし、呼吸しても胸が動きづらくなります。また、横隔膜がよわくなることでも換気量が下がります。
その結果、高齢者は活動すると疲れやすくなったり、息切れがするようになったりします。これは、さらに寝たきりや太りすぎでも症状が出やすくなります。
心臓の疾患のある人も、息切れの症状が出やすくなります。
呼吸中枢の機能が下がることによる変化について

呼吸をつかさどる中枢は脳にありますが、この機能が低下すると肺で換気をしにくくなります。脳梗塞などの脳の病気によっても、誤嚥がおこり肺炎がおこりやすくなります。
免疫の低下による呼吸の変化について

気管の粘膜では、細菌を外に出す力があるのですが、高齢になるとこの力が弱まっていきます。そのため、肺炎、気管支炎、息切れ、低酸素状態になりやすくなります。
さらには、結核や肺がん、COPDなどの肺病もおこりやすくなります。
肺の病気を防ぐには
肺の老化の大きな原因とされるのが喫煙です。そのため、禁煙、適切な運動と食事、睡眠、そして肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンの接種や、健康診断を受けるようにします。
高齢者の誤嚥性肺炎-合併症が背景にある肺炎-

脳卒中、脳梗塞、認知症、パーキンソン病などの疾患のある人、そして寝たきりや胃ろうのある人は、誤嚥がおこりやすい傾向があります。
本人や家族が気づきにくい誤嚥(不顕性誤嚥)がおこりやすく、そして不顕性誤嚥を減らすことは難しいともいわれます。起きているときだけでなく、寝ているときもおこります。
高齢者の肺炎のよくある症状

高齢者は、若い人に比べると感覚がわかりづらくなっているので、すぐに肺炎と気づきにくいこともあります。たとえば、なんとなく元気がない、何も食べたくないといった症状もあります。また、若い人よりも脱水になりやすいので注意する必要があります。
・肺炎によるこころの変化
元気がない、だるい、うとうとしがちになることがあります。
・食事中にむせる、のどがゴロゴロなる、痰に色がついていることも
微妙な変化でわかりづらいこともあるので、気になれば医師に相談しましょう。また、急激に呼吸不全をおこす人もいるので急がなくてはいけません。
くり返しやすい高齢者の肺炎

高齢者の肺炎は、若い人にくらべると何度もくり返したり、治りづらいこともあります。また、若い人よりも呼吸が悪化しやすく、ときには命にかかわります。
そのため、肺炎をおこしやすい人は日ごろから体調の観察をして、すぐに受診するようにしなければなりません。
5年ごとの肺炎球菌ワクチン-とくに合併症のある人へ-

肺炎球菌により、悪化しやすいリスクのあるひとは、とくに糖尿病、心臓病、呼吸器の病気のある人や、その他免疫が下がっているひと、そして喫煙者などです。
もともと肺炎球菌は、鼻の奥に住んでいることがあるのですが、それが気道に入りこむと肺炎や気管支炎などをおこします。
肺炎球菌ワクチンは5年おきでよいのですが、もちろん時間の経過とともに免疫が低下します。そのため、5年ごとに続けてワクチンを打つことが大切なのです。
インフルエンザ-死亡率は65歳以上で増加-

インフルエンザで重症になりやすい人は、高齢者、慢性呼吸器疾患、心臓病、糖尿病、腎臓病、肝臓病のある人、そして妊婦だといわれています。このような人はとくにインフルエンザワクチンの摂取が勧められます。
インフルエンザにかかると、肺炎球菌による肺炎をおこしやすくなります。両方のワクチンを接種することは、全身の症状が悪化することを防ぐことになるのです。
気づかないうちにおこる誤嚥への対応

気づかないうちにおこる誤嚥(不顕性誤嚥)は、わかりやすい「むせこみ」よりも、治すことはむずかしいとされています。
肺炎を防ぐために大切なことは、口のなかを清潔にすることが1番で、はみがきやうがい、口のなかを乾燥させないようにします。
寝ているうちに唾液が気管に流れるのを防ぐには、枕を調節して頭を高くするのもいいでしょう。
また、口や舌の運動、深呼吸で肺の筋肉をうごかすことも肺炎予防になります。
日ごろから栄養失調にならないように食事を摂るようにしましょう。